『なりわい』をめぐれば
「小田原」が見えてくる-
〝小田原らしいまち歩き〟
のススメ

「バリアフリーまち歩き」実証実験の様子。かまぼこ通りの籠常商店の横を通る。

旅先などでよく聞く、『まち歩き』という言葉。
一般的に、目的のスポットに行って帰るだけでなく、テーマに沿った視点でまち全体を楽しみつつ新たな魅力を発見する…といった、〝まちめぐりの散策スタイル〟のことを言います。
案内する市民ガイドさんの存在であったり、企画ごとに独自のMAPが配布されることが多いのも特徴で、観光のひとつのかたちであると同時に、最近では、地元を再発見したい地域住民や、エリアの知識を深めたい移住者・移住検討者などの層にも、そのニーズはひろがってきています。
そして、実は小田原は、その『まち歩き』のメッカといっても過言ではありません。
四季折々、様々なまち歩きツアーがラインナップされ、小田原のまちなかでは、ガイドと一緒に歩く多くの人たちの姿が見られます。
2019年と2022年には、全国のまち歩き活動家が集う「日本まち歩きフォーラム」の開催地ともなりました。
なぜ、小田原で、『まち歩き』が活発になっていったのか。
その歩みと〝小田原らしいまち歩き〟について、今回は紹介したいと思います。

「山なりわい」「里なりわい」「海なりわい」が形づくっていった
〝小田原らしさ〟

小田原城のお堀と桜
「里なりわい」のひとつ〝みかん〟
小田原は〝千年以上の歴史〟があるまち、と言われています。
8世紀に東西を行き交う道である「東海道」が定まり、16世紀の北条氏の頃には、その中心にあるまちとして、小田原では様々な『なりわい』が栄えました。
『なりわい』とは、生計のための仕事や家業を指す言葉ですが、小田原でのニュアンスは少し異なり、〝自然の恵みに手を加えたものを、流通に乗せて広げていく〟こと(「小田原市政策総合研究所」(2000年設立)にて解釈)。
具体的には、温暖な気候と富士山の火山灰による水はけのいい土壌に恵まれた〝柑橘類〟〝梅干し〟などの「里なりわい」、山の木を加工した〝木製品〟〝寄木細工〟〝漆器〟などの「山なりわい」、海からの魚を加工した〝かまぼこ〟〝干物〟などの「海なりわい」。
それらを生産・製造し、街道を行き交う人に販売、提供していくことで、小田原は経済面でも文化面でも栄え、まちの認知としても広がっていったのです。
そして、その歴史を歩んできた多くのお店は、今も老舗として軒を連ね、小田原のまちを彩っています。
そういった『なりわい』に根ざした取り組みを広げる活動により、〝小田原らしさ〟はわかりやすいかたちで整い、それらをベースに小田原のまちをめぐることが、『まち歩き』のスタンダードともなっていきました。

「かまぼこ通り」と「街かど博物館」

旧小田原魚市場で歴史の説明(「バリアフリーまち歩き」実証実験)

例をあげるとすると、例えば、海の近くの、昭和40年代まで旧小田原魚市場があったあたり。
前述でいう「海なりわい」ー〝かまぼこ〟〝干物〟の老舗が立ち並ぶ通りは、現在は「かまぼこ通り」と呼ばれ、週末や観光シーズンは多くの観光客で賑わいます。
中でも「かまぼこ通り」の入口に建つ、かつて漁網を販売していた歴史的建造物は、〝情報発信の施設〟として「小田原宿なりわい交流館」の名前で再生、観光情報やお茶などを提供する〝無料休憩所〟として、また、その風情ある佇まいから〝小田原有数の観光拠点〟としても、強い人気を博しています。

「小田原宿なりわい交流館」
そして、まちのあちこちで見かける「街かど博物館」の存在も、〝小田原らしいまち歩き〟のポイントとして欠かせません。
「街かど博物館」とは、小田原の『なりわい』文化を感じることのできるお店や施設を〝まちの博物館〟として認定、訪れる人に、展示や店主との会話、体験などを通して、小田原の歴史や特徴に触れてもらおうというもの。
現在は、小田原駅周辺や旧東海道エリア、板橋・早川エリアに、全17館が存在。
これらのスポットをテーマに沿ってセレクト、めぐっていく『まち歩き』ツアーも、多く企画されています。

〝まち歩きのまち〟としての認知と、
時代のニーズに合わせた広がりと進化

そういった『まち歩き』活動や、「まち歩きフォーラム」などでの交流により、〝小田原のまち歩き〟の存在や独自のスタイルは、広く全国に知られるようになってきました。
コロナ禍では、通常の『まち歩き』ツアーははあまり開催できなかったものの、〝オンラインまち歩き〟の模索や、誰もが楽しめるまち歩き=〝バリアフリーまち歩き〟の実証実験など、様々な角度からの創意工夫を重ねていきました。
また、コロナ禍でのワークスタイルの変化により、地域で過ごす時間が増え、より地元への関心を持つようになった居住者や、一方、都心から小田原への住み替えを考えるようになった移住検討者など、観光客以外の新たな層も、『まち歩き』に興味を持ち、参加するようになってきたのです。
ガイドさん自身も、まちや歴史に通じている人だけでなく、テーマに合った専門家や、その土地の生活者、個人として案内する人も現れるなど、参加者のニーズに合わせ、変化、進化を続けています。

『小田原まちあるきてぬぐいスタンプラリー』

ケントスコーヒー店頭に設置されている「三つ鱗」スタンプ。
そんな中、昔から小田原の『まち歩き』活動に深く関わっている平井丈夫さんによる〝新企画〟として立ち上がったのが、『小田原まちあるきてぬぐいスタンプラリー』。
概要に、「小田原の名所&名産品が刷られたてぬぐいを手に、思いつくまま、ぶらりとまち歩き。まちのスポットでスタンプを押していけば、いつしか世界でひとつだけの〝小田原まちあるきてぬぐい〟ができあがります。」とある通り、〝気楽に『まち歩き』をする〟ための提案です。
まちの購入店で手ぬぐいを買い(それだけで既にお土産に!)、気分にまかせて各スポットを訪れ、設置してあるスタンプを好きなように押していく…という、『まち歩き』の新しい、自由なかたち。
スタンプに描かれている、「梅の花」は小田原市の花(梅干も生産)、「三つ鱗」は北条氏の家紋、「手裏剣」はかつていたと言われる〝風魔忍者〟、「桜の花」はお花見スポットであるお堀端や西海子小路のイメージ、「二宮金次郎」は言わずと知れた小田原生まれの農政家、「船」「かまぼこ」は前述の「海なりわい」の象徴と、それぞれに小田原らしさがシンプルにわかりやすく示されています。

『小田原まちあるきてぬぐいスタンプラリー』表紙面。

スタンプラリーをめぐる『まち歩き』企画。htmono stand hayaseに設置された「船」スタンプを押す人たち。

『小田原まちあるきてぬぐいスタンプラリー』

[手ぬぐい購入店(2023年5月現在)]
小田原市観光交流センター / 小田原城 常盤木門SAMURAI館 売店 / ケントスコーヒー / 欄干橋ちん里う / himono stand hayase
[スタンプスポット(2023年5月現在)]
「桜の花」: 小田原市観光交流センター / 「手裏剣」: 小田原まると / 「かまぼこ」: 籠清駅前店 / 「三つ鱗」: ケントスコーヒー /「二宮金次郎」: 箱根口ガレージ / 「船」: himono stand hayase / 「梅の花」: 欄干橋ちん里う

いよいよゴールデンウィーク本番。
小田原でも、数年ぶりに「北条五代祭り」や「松原神社例大祭」が完全復活するなど、観光地としても大きな盛り上がりを見せる予感です。
この機会に、小田原の『なりわい』に思いをはせつつ、〝小田原らしいまち歩き〟を楽しんでみてはいかがでしょうか。

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